2019年10月30日水曜日

白い声/伊集院静 ★★☆ 2019/10/30

上巻:熱心なキリスト教信者の18歳の玲奈が、少女時代に自分を助けたいまは中年の作家野島に懸想して、京都の古い邸宅の離れで処女を散らす。この野島、女癖のわるい人格破綻者で、聖女のような玲奈に出あたったことにより、下巻、大変な思いをしつつも更生していく、という筋書きだったらつまらないよな、と思った。
下巻:半殺しの目にあうもからくもスペインに脱出した野嶋を追う玲奈。重度の結核となる明日をしれぬ野嶋を玲奈は献身的に支えながら巡礼路を進む、そんな内容。なんじゃそれって思うけど、野嶋がクソみたいな人間であるので小説になっているんだね。上巻を読み終えたときに、玲奈の献身で野嶋が更生する話かと予想したが、まあ魂が救われた的な感じはするが、あっけなく結核で死んじゃうし、何だろと思ってしまう良作。

夢をまことに/山本兼一 ★★★ 2019/10/29

上巻:江戸時代を舞台にした時代小説だが、国友村の鉄砲鍛冶が、オランダから渡来した空気銃や望遠鏡の複製を通じて、世の中のことわりを解明することに興味を持つというお話。恋愛沙汰や刃傷沙汰などのない淡々とした物語なのだが、主人公のひたむきな姿勢に惹き込まれる良作。
下巻:鉄砲鍛冶がたんたんと仕事に打ち込んでいくお話。かつて対立した年寄りの息子も弟子にとって、後継者づくりにも励む人格者として描かれる、国友一貫斎は実在の人物でWikipediaにも項目があった。いい人のお話って、深みに欠けるように思うが、徹底的にいい人に描かれているのが特徴。最後まで読みやすかった。

2019年10月28日月曜日

仮想儀礼/篠田節子 ★★★ 2019/10/28

上巻:公務員を辞めて妻にも去られたゲーム作家が元編集者とともに新興宗教を興していい暮らししようというお話。身を持ち崩しやすい風俗嬢や食品会社の社長など信者が巻き起こす騒動を乗り越えて大きくなっていく。上巻の最後で、巨大新興宗教の教祖との摩擦があったが、下巻は大きくなった組織の中で内紛が起こって、的な流れなのかなあ。
下巻:上巻で、新興宗教を興すことに成功したのだが、狂信的な女性信徒4人組の暴走に翻弄される結末というか終末まで転落具合が良かった。サヤカがちょっとかわいそう。 同じく新興宗教を興すお話「砂の王国」と同じペースで読んでいたので、成功からの転落がそれぞれでなかなか楽しめた。

砂の王国/荻原浩 ★★★ 2019/10/28

上巻:路上生活をするまで落ちぶれた男が、そこで知り合った知恵遅れの青年を教祖に仕立てた新興宗教を興すお話。下巻は、破綻していくお話なのかな。楽しみ。
下巻:上巻で、ホームレス中に知り合ったハンサムな知恵遅れの青年と能弁な占い師を仲間に引き入れて新興宗教を興して成功するが、最後は追放されてホームレスに逆戻るというスリリングな展開が楽しめた良作。同じく新興宗教を興すお話「仮想儀礼」と同じペースで読んでいたので、成功からの転落がそれぞれでなかなか楽しめた。

2019年10月27日日曜日

貸し込み/黒木亮 ★★☆

法廷シーンから始まって、とっつきにくかったが、痴呆症の老人に無理やりお金を貸し付けた銀行を糾弾するお話なのかなあと読み続け、終盤に差し掛かったところで下巻から読み始めたことに気づいてびっくりした。こんなことあるんだねえ。おかしな登場人物の宮下のことも気になったが、上巻から読み直す気にはなれず。

2019年10月26日土曜日

許されざる者/辻原登 ★☆☆ 2019/10/25

日露戦争前、和歌山の森宮を舞台に洋行帰りのドクターが森林を相続した少女とともに暮らしたり勉強したりしながら、民権運動の高まりを目の当たりにして、といった話なんだろうか。読みづらいわけではないが、さして面白いわけでもなく、366ページでドロップ。
許されざる者とは何だったんだろうか。ひどい事件でも起こるのかと思って読み始めたが、ここまではそんなものはなかった。

2019年10月10日木曜日

無限のビィ/朱川湊人 ★★☆ 2019/10/08

上巻感想: 少年たちが登場する小説家と思っていたら、超能力なんだか怪しい存在が登場してきて、軽いファンタジーものか。風呂屋の知的障害を持つ女子をあっさり焼死させたりけっこう残酷。まあまあ面白かなと読み続けてきたが、下巻で面白さが全開になってほしいところ。
下巻感想: 人に取り付くことができる謎の生物ビィと少年たちの戦いのお話、という感じで上巻から引き続きいい感じだっただんだけど、最後が残念。エィが出てくるのはいいとし、もとは宇宙人でとかそんな起源の話はいらないよね。乗り移られた人たちももとに戻りましたとか、エピローグで羅列というのも残念な点。残酷表現がやや際立つ佳作。